うなぎは共食いする?隠れ家で防げるのか・水槽環境と注意点を調査
水槽でうなぎを複数飼育していると、「共食いしないか」「隠れ家を増やせば防げるのか」が気になるところです。
そこで今回は、ニホンウナギの共食い、攻撃行動、隠れ家の利用、飼育密度などについて、学術論文や環境省、大学、FAOなどの資料を横断して調べました。
先に結論をいうと、うなぎの共食いは実際の飼育研究で確認されています。一方で、「隠れ家を増やせば共食いを防止できる」とまでは、今回確認した資料からは断定できませんでした。
ただし、ニホンウナギが石や砂利の隙間、管などを隠れ場所として利用することについては複数の研究があります。つまり、隠れ家は「共食いを防ぐ装置」と考えるより、うなぎ本来の行動に合った水槽環境を作るための要素として考えるのがよさそうです。

うなぎは共食いする?
共食いは起こり得ます。
今回確認したなかで特に直接的なのが、1978年に「水産増殖」に掲載された「ウナギクロコの放養密度が減粍・生長に及ぼす影響」(J-STAGE)です。
この研究では、ウナギクロコを異なる放養密度で飼育し、減耗や成長、餌料効率などを比較しています。その結果、試験した範囲では放養密度が低い区ほど減耗率が高く、その主な原因として共食いが挙げられています。
つまり、「餌を与えていれば絶対に共食いしない」とは言えません。
一方、この結果には注意も必要です。この研究では、放養密度が高いほど共食いが多かったのではなく、逆に低密度の区ほど共食いによる減耗が多いという結果でした。
そのため、家庭の水槽について単純に「過密だから共食いする」「数を減らせば防げる」と置き換えるのも適切ではありません。
今回の調査から言えるのは、ニホンウナギでは飼育下で共食いが実際に起こること、そして共食いの発生を水槽内の一つの条件だけで説明するのは難しいというところまでです。
うなぎ同士では噛みつきや隠れ家の取り合いも起こる
「丸のみするような共食い」だけでなく、うなぎ同士の攻撃行動にも注意が必要です。
2022年に発表された「Agonistic behaviour of wild eels and depressed survival and growth of farmed eels in mixed rearing experiments」(PubMed)では、天然のニホンウナギと養殖個体を一緒に飼育し、生残、成長、行動を比較しています。
小型水槽での行動観察では、天然個体のほうが隠れ場所を占有する割合が高く、噛みつきも多く確認されました。また、天然個体と一緒に飼育された養殖個体は、養殖個体だけで飼育した場合より生残率と成長率が低くなりました。
これは家庭で飼育するすべてのうなぎに同じ結果が出ることを意味しませんが、少なくとも同種だから常に平和に同居する魚ではないことは押さえておいたほうがよいでしょう。
個体差や体格差がある複数飼育では、傷、噛みつき、特定個体による隠れ家の占有なども観察し、問題が起きた場合に分離できるようにしておくほうが安全です。
隠れ家を増やせば共食いを防げる?
ここは今回の調査で、旧記事からもっとも考え方を変えるべきポイントでした。
「隠れ家を増やせば共食いを防げる」と直接結論づけられる根拠は、今回確認した資料からは得られませんでした。
隠れ家に関する研究や公的資料は複数あります。しかし、その多くが調べているのは、共食い防止そのものではなく、
- うなぎがどのような場所を隠れ家として利用するか
- 体サイズによって好む環境がどう違うか
- 石や砂利の隙間をどのように利用するか
- 人工的な隠れ場所としてどのような構造を利用するか
といったテーマです。
したがって、「隠れ家として利用する」=「共食い防止効果が証明されている」ではありません。
ここは分けて考える必要があります。

それでも、うなぎ水槽に隠れ家を用意したい理由
共食い防止効果を断定できないからといって、隠れ家が不要という意味でもありません。
むしろ調査すると、ニホンウナギと「隠れる場所」の関係はかなり強いことが分かります。
自然界でも石や河岸の隙間を利用する
環境省が2017年にまとめた「ニホンウナギの生息地保全の考え方」では、これまでの調査や研究をもとに、ニホンウナギが河川や沿岸域でどのような環境を利用しているかが整理されています。
資料では、石やコンクリートブロック、植生、落ち葉などが形成する空間も隠れ場所として取り上げられています。
家庭の水槽を自然河川と同一視することはできませんが、少なくとも「体を隠せる隙間や空間を利用する」という行動自体は、ニホンウナギの生態と合っています。
体の大きさによって利用する環境も違う
九州大学の研究チームは、鹿児島県の4水系でニホンウナギの生息環境を調査しています。その研究成果は、九州大学公式サイトの「『うなぎの寝床』の環境を科学的に解明」で紹介されています。
研究では、小型個体は砂利が多い場所、大型個体はより大きな石が多い場所を利用する傾向などが示されました。また、ニホンウナギが河床や河岸の隙間に隠れる習性についても説明されています。
つまり、「うなぎ用の隠れ家なら、このサイズ一択」と考えるより、飼育している個体の大きさに合わせて、無理なく体を入れられる空間を考えるほうが自然です。
どんな隠れ家を好む?円管を使った研究もある
人工的な隠れ場所として、円管を使った実験もあります。
2025年の「ニホンウナギの休息に適した円管の材質,内径,色および設置方法等に関する研究」(J-STAGE)では、円管の材質、内径、色、流水に対する方向、開口部の条件を変え、ニホンウナギの行動を比較しています。
この実験では、全長300±20mm、体高19±2mm程度の個体に対し、塩化ビニルまたはコンクリート製、内径30mm、黒色、両端が開いた円管などが休息場所として選ばれました。
ただし、これは「家庭水槽のうなぎには内径30mmの塩ビ管が正解」という意味ではありません。
研究対象の個体サイズが限定されており、研究自体も河川環境の保全を念頭に置いたものです。
家庭水槽に応用するときは数値だけをコピーするのではなく、飼育個体の太さや全長に合わせて、無理なく出入りでき、体表を傷つけにくい構造にすることが重要です。
隠れ家は「数」だけ増やせばよいわけではない
複数飼育なら、「1個より3個、3個より5個」と単純に隠れ家を増やしたくなります。
しかし今回確認した資料から、隠れ家の数を増やすほど共食い率が下がるというデータは確認できませんでした。
さらに、2022年の攻撃行動研究では隠れ場所の占有をめぐる個体差も確認されています。
そのため水槽では、個数だけを見るより、
- 特定の個体だけが占有していないか
- ほかの個体が落ち着ける場所も残っているか
- 出入口がふさがれていないか
- 体格に対して狭すぎないか
- 鋭い部分で体表を傷つけないか
- 汚れや残餌がたまる構造になっていないか
- 隠れ家を置きすぎて管理しにくくなっていないか
まで観察したほうが実用的です。
複数飼育では「体格差」にも注意したい
共食いを扱った1978年の研究では、小さい個体が大きい個体に食べられたことが減耗の一因と考察されています。
また、国連食糧農業機関(FAO)のニホンウナギの養殖情報「Anguilla japonica」を見ると、養殖では成長速度の違いに応じてサイズ選別を行う管理方法が紹介されています。
もちろん、FAOが紹介する商業養殖と家庭用水槽では規模も飼育密度も大きく異なります。そのため、養殖場の密度や管理方法をそのまま家庭水槽の推奨条件にすることはできません。
それでも、同じ時期に飼い始めた個体でも成長差が生じるため、体格を継続して確認するという考え方は、複数飼育を管理するうえで参考になります。
「最初は同じくらいの大きさだったから大丈夫」と考えず、成長後に大きな体格差が出ていないかも確認しましょう。
「高密度なら共食いしない」と考えるのも危険
先ほど紹介した1978年の研究では、試験条件下で低密度区ほど共食いによる減耗が多いという、一見すると意外な結果が出ています。
しかし、だからといって家庭水槽を過密にするのは適切ではありません。
同じ研究では、高密度になるほど1尾あたりの成長などが低下する傾向も報告されています。
つまり、この研究から読み取るべきなのは、
「密度を上げれば共食い対策になる」ではなく、「共食いの発生は密度だけでは単純に説明できない」
ということです。
家庭水槽では、ろ過能力、水量、水質悪化、個体サイズ、隠れ場所、餌、攻撃行動などを含めて判断する必要があります。
うなぎ水槽は明るすぎない環境も意識する
ニホンウナギは夜間に活動する性質を持っています。
九州大学などの研究チームは、水辺の人工照明がニホンウナギの行動へ及ぼす影響を調べています。九州大学公式サイトの「水辺の人工照明が日没直後のウナギの摂餌を妨げる」では、人工照明によって日没直後の摂餌活性の上昇が妨げられたことが紹介されています。
これは河川や農業用水路を対象とした研究であり、そのまま家庭水槽の「照明は1日○時間」といった設定を示す資料ではありません。
ただし、ニホンウナギの本来の行動を考えると、24時間明るい状態にしたり、強い照明から逃げられる場所がまったくない環境にしたりするのは避けたいところです。
観賞のために照明を使う場合でも、隠れ家や陰になる部分を作り、夜間には消灯するなど、明暗のある環境を意識するとよいでしょう。

調査から考える、うなぎ水槽の作り方
ここまで紹介した研究を家庭飼育へそのままコピーすることはできません。
その前提で、今回確認できた事実から水槽づくりを考えると、次のように整理できます。
| 確認したいこと | 調査から分かったこと | 水槽での考え方 |
|---|---|---|
| 共食い | 飼育実験で実際に確認されている | 複数飼育では発生する可能性を前提に観察する |
| 体格差 | 小さい個体が大きい個体に食べられた研究例がある | 成長差を継続的に確認する |
| 隠れ家 | 石や河岸の隙間、管などを利用する | 体を隠せる場所を用意する |
| 隠れ家と共食い | 直接的な防止効果は今回確認できず | 「置けば安全」と考えない |
| 個体間競争 | 噛みつきや隠れ家占有が観察されている | 特定個体による独占や傷を確認する |
| 照明 | 人工照明によって日没直後の摂餌活動が変化する研究がある | 暗所と消灯時間を確保する |
隠れ家を入れたあとこそ観察する
隠れ家を設置して終わりではありません。
実際に見るべきなのは、うなぎがその環境をどう使っているかです。
- 落ち着いて隠れ家を利用しているか
- 1匹だけが隠れ家を占有していないか
- ほかの個体に噛み傷がないか
- 餌を食べられていない個体はいないか
- 体格差が大きくなっていないか
- 隠れ家内部に汚れがたまっていないか
こうした変化を見ながら、必要なら隠れ家の配置変更や個体の分離を考えます。
特に噛みつきや傷、著しい体格差などが確認された場合、「隠れ家をもう1個足せば大丈夫」と決めつけず、別飼育も含めて対応したほうが安全です。
旧水槽で「隠れ家を増やした」という実例について
このページの旧記事では、うなぎの共食い対策として水槽内に隠れ家を設置した実例を紹介していました。
実際に飼育者が行った工夫としては参考になります。
ただし今回あらためて研究資料を調べた結果、その実例だけを根拠に「隠れ家を増やせば共食いを防止できる」と一般化することはできないと判断しました。
一方で、ニホンウナギが自然環境や実験環境で隠れ場所を利用すること自体には、複数の研究や公的資料による裏付けがあります。
そのため旧記事の経験は、
「共食い防止法の正解」ではなく、「飼育個体が身を隠せる環境を増やした一つの実例」
として捉えるのが適切です。
まとめ|隠れ家だけに共食い対策を任せない
今回、ニホンウナギの共食い・攻撃行動・隠れ家・飼育環境について資料を横断して確認すると、単純な「隠れ家を入れれば共食い防止になる」という結論にはなりませんでした。
- ニホンウナギでは飼育下で共食いが確認されている
- 個体間の噛みつきや隠れ家の占有も確認されている
- 一方で、石や河岸の隙間、円管などの隠れ場所を利用する
- 体サイズによって利用する生息環境が異なる研究結果もある
- 隠れ家そのものが共食いを防止するとまでは確認できない
- 照明もニホンウナギの活動に影響を与える可能性がある
したがって、隠れ家は「共食いを止める道具」というより、うなぎ本来の行動に合った水槽環境を作るための設備として考えるのが適切です。
複数飼育では隠れ家の有無だけで安心せず、体格差、噛み傷、餌の取り方、隠れ家の占有などを継続的に観察し、必要なら個体を分けられるようにしておきましょう。
主な確認資料
- ウナギクロコの放養密度が減粍・生長に及ぼす影響|J-STAGE
- Agonistic behaviour of wild eels and depressed survival and growth of farmed eels in mixed rearing experiments|PubMed
- ニホンウナギの生息地保全の考え方|環境省
- 「うなぎの寝床」の環境を科学的に解明|九州大学
- ニホンウナギの休息に適した円管の材質,内径,色および設置方法等に関する研究|J-STAGE
- Anguilla japonica|FAO Cultured Aquatic Species Fact Sheets
- 水辺の人工照明が日没直後のウナギの摂餌を妨げる|九州大学
旧動画の経験談を一般的な飼育基準へ変換しない構成に変更。